リーディングを、本当に聴くことに特化したら、その人の脳内にはむしろ豊かなイメージが生まれるのではないだろうか。
そう考えたのが発端です。だから観客の皆さんには、途中で目隠しをしていただきます。そうして五感のひとつをシャットアウトすることで、第六感や第七官界にわずかでも届いたら、と願いを込めて『五感overs』というシリーズタイトルを付けました。
その第一弾をノゾエ征爾さんにお願いしたのは、ノゾエさんがここ数年、老人ホームで演劇のワークショップに関わり、たくさんの発見をしていると聞いていたからです。一般に「衰え」とされる身体機能の変化と演劇を通して向き合っているノゾエさんなら、この企画を広げてくれるだろうと思いました。
テキストは楳図かずおさんの短編です。ご存知、恐怖漫画の第一人者ですが、その作品には、弱者同士の差別、子供の残酷、あるいは歴史の無常感、それらに抗おうとする人間の小さ過ぎる存在感など、私達が「怖い」と感じるさまざまな事象がいくつものレベルで描かれています。この頑丈で繊細な原作なら、ビジュアルと切り離しても成立するはず。私の勝手な思い込みに、楳図さんから寛大なご対応をいただきました。
漫画からビジュアルを排したら? 闇の中でリーディングを聴いたら? 脳が、五感が、どう反応するのか、ぜひ体験してください。
*目隠しでお聴きいただくのは一部です。
徳永京子
ノゾエ征爾より、
楳図かずお リーディングについて
はじめまして はえぎわのノゾエ征爾と申します。
今年の始めころだったか、徳永さんからお電話がありまして、
「目隠しリーディングなるものをやってみませんか?」とのことだった。
その名の通り、目隠しをしてリーディングを聞かせるということなのだが、全く想像がつかなかった。
ただでさえ聴覚がメインとなるリーディングというものから、貴重な支えである視覚を取り上げてしまうなんて。
ワクワクした。
想像がつかないことや、未体験のものに、言い知れない興味を魅かれる。
徳永さんが、さらに追って、小悪魔的に尋ねて来る。
「何かイメージ湧きます?」
「ワクワクします」
答えになってない。
答えになってない答えしかできなかったけど、何かを始めるにあたって、ワクワクするかしないかは最も重要なのであって、はえぎわ公演が終わった今、ようやくこの企画に向けて動き出せる事に喜びを感じています。
節目節目で多くの刺激を受けてきた楳図かずおさんの作品をやらせていただけることにも、感謝感謝です。
承諾を得るにあたって奔走してくださった徳永さんに、ここでも感謝です。
こんなに頑張って権利を取っていただいたのだから、これはコケられないな。。
って、真面目に考えてもやれるものでもないので、衝動的に楽しんでやりたいと思います。
うちの漫画(絵描き)王こと鈴真紀史と、天然最強戦士・川上友里と三人で、楳図ワールドに没頭したいと思います。
どうぞお楽しみに!
ノゾエ征爾
『五感overs』第1回 ノゾエ征爾 × 楳図かずお
2011年7月23日(土)9時30分&22時
*開場は30分前です。
*2ステージ(入れ替え制)
会場:新世界(西麻布)
料金:2,500円(全席自由)+ドリンク代
客席数が限られています。完売の場合はキャンセル待ちでのご入場となります。
当日は受付順にご入場いただきます。お立ち見の可能性もございますのであらかじめご了承ください。
問い合わせ:Produce lab 89 ☎ 090-8308-4433