最初にマームとジプシーを観た『しゃぼんのころ』でも衝撃を受けたし、それ以降の作品でもつくづく舌を巻いているのですが、藤田貴大はなぜこうも、あったりまえの生々しさや暗い瑞々しさで、女の子の生理を舞台で表現できるのでしょう。
だから決して、性を描けないとは思っていないのです。ただ、藤田さんに『官能教育』をお願いするのは、もう少し先だろうと考えていました。でも彼は「官能をどう扱うかは、自分のこれからの作品づくりに避けては通れない問題」と、強い関心を寄せてくれました。
中勘助の『犬』を勧めたのは直感です。理由を後付けするなら、生の底にくっついた性の醜さとたくましさを簡潔な文体でえぐり出す勘助は、強力な一撃になるかもしれないと思いました。
出演者は、藤田さんが「知っている俳優さんの中で1番色っぽい」と名前を挙げた山内健司さんが、青年団の公演中(!)にもかかわらず、参加を快諾してくれ ました。そしてマームとジプシーのレギュラーメンバーであり、山内さんが「ずっと組んでみたかった」と興奮した青柳いづみさん、尾野島慎太朗さんも参加し てくれます。
リーディングと銘打ってはいますが、どうやらみっちり稽古を積み、普通のリーディングにはしない模様です。
藤田貴大という劇作家・演出家が、性を第一のテーマに置いて作品をつくった時、表現者としてどう“変態”するのか。それは確実に、彼の未来につながる道に カーブをつけるでしょう。でもその歪みこそが色気と呼ばれるものの正体だったりします。ささやかな企画ですが、もしかしたら意外と大きな痕跡を遺す公演に なるかもしれません。
徳永京子 (Produce lab 89責任者)
犬と変態と僕。
そして、役者さん、及びに、
観客のみなさんへ
今回、僕が、勘助の『犬』と対面してみて、考察してみたいこと、というのは、こういうことだ。
『犬』は、男女が、犬に変身して、セックスしまくる、という、まあ、ざっくり言うと、そんな話で。すごいウケるんだけど、話自体に、まだ、なんの希望も抱けていない。
でも、それでも、
今回、僕が、勘助の『犬』と対面してみて、まず、
変身、という、言葉を、
変態、という、言葉に、
置き換えるところから、作品づくりを始めてみようと思った。
そして、ここから、考察してみたいこと、というのは、
役者さんの身体は、変態、していくのか。ということである。
物語とか表現も、さらには、もっと大きな、生活とか日常も、常に、形状を変えながら、変態、しているように感じている。
そんな、うねりの中、役者さんの身体は、舞台上で、変態していくか。いや、変態なのか、役者さんは。本当に、変態なのか、お前たちは。僕だけじゃないだろうな、変態なのは。お願いだから、僕を独りにしないでおくれ。無視されるのが一番、キツいんだよ。一緒に、変態しようよ、一緒に、変態、しよう。
そしてこれは、当日、見に来てくれる人たちに向けても、僕は言っているつもりである、一緒に、変態しよう、したいよね?
変態したがりな、僕らは、いつか何かに何者かに、脅かされるかもしれない、しかし、その時も、変態しよう、したいよね?
まずは、役者さんと、山内さん、青柳さん、尾野島さんと、変態するとこから、始めます、彼ら、変態、したがりだからさ。
あ、少しだけ希望、抱いていたわ、犬。
藤田貴大
『官能教育』第4回 藤田貴大 × 中勘助『犬』
2011年11月23日(水) - 27日(日) 全6ステージ
23日(水) 22:00
24日(木) 19:30&22:00
25日(金) 14:00
26日(土) 22:00
27日(日) 15:00
*開場は30分前です。
会場:新世界(西麻布)
料金:2,500円(全席自由)+ドリンク代
客席数が限られています。完売の場合はキャンセル待ちでのご入場となります。
当日は受付順にご入場いただきます。お立ち見の可能性もございますのであらかじめご了承ください。
問い合わせ:Produce lab 89 ☎ 090-8308-4433