『五感overs』、復活。
produce lab 89をスタートした時、リーディングのいろいろな可能性を探りたい、と思いました。たとえば、「官能」というテーマでテキストを選び、作品をつくってもらう『官能教育』は、ひとつのはっきりした角度をつけることで、それに取り組む演出家の個性が明確に出るシリーズになると考えたわけです。
それとは別に、リーディングという形態そのものを、内側から疑うことができないかと考えたのが『五感overs』でした。通常の演劇作品よりも軽いフットワークのリーディングだからこそ、集まった人の五感を、揺らす/ひずませる/疑わせる/忘れさせる/覚醒させる大胆な実験ができないかと。
第1回は2011年、ノゾエ征爾さんに「観客に途中で目隠しをしてもらうリーディング」をつくってもらいました。リーディング=聴く演劇と思いがちですが、実は視覚的な要素が理解を助けているはずで、それを無くして本当に聴くことに集中したらどうなるか、という試みでした。テキストは梅図かずおさんの短編で、お客さまがアイマスクを取ると、壁一面が梅図さんの漫画になっているという趣向と共に、ノゾエさん、鈴真紀史さん、川上友里さんが漫画を熱く読んでくださいました。
http://producelab89.com/2011/07/180
少し前のことですが、ふと、範宙遊泳がやっているのはさまざまな境界を溶解しようとする挑戦で。そこには五感の境界も含まれると気が付きました。その作・演出家である山本卓卓さんには昨年、『Side C』の「ラジオ卓卓」で、映像を使った独自の手法やこれまで影響を受けたものについて3時間喋ってもらいましたが、今度はトークではなく作品をつくっていただきます。
「死」をテーマにお願いしたのは、山本さんが五感の先にあると想定しているのはきっと死ではないかと思ったからで、例によって直感です。
なんと、作・演出・出演・音楽・映像、すべてひとりでやってくださるそうで、何となく、自分という有機物を無機物に変換するような作業になるのではと想像します。違うとしても、大きな句読点になる作品が生まれるのは間違いありません。
どうぞお見逃しなく。ご来場をお待ちしています。
Produce lab 89 徳永京子